Biomet 3iは、ブローネマルク(Nobel Biocare)のコピーメーカーですので、同タイプと考えて下さい。
ここで、インプラントの特質を整理してみましょう。そうすれば、各インプラントメーカーの特徴や長所・短所が明確になります。
まず、インプラントの特質を表す事項を以下に説明しておきます。
特質 | 説明 |
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表面性状 | インプラントの表面の粗さのこと。表面が荒いほど、骨との結合のしやすくなります。 |
初期固定 | インプラントが骨に接合するのには、条件があります。そのひとつが、インプラントを埋入した時点で緊密に骨に固定されていることです。それが大切と言われています。各メーカーは、インプラントの表面のスレッドの形状を工夫することにより、埋入時の安定感を求めています。 |
1回法/2回法 | インプラントを埋入した時点で、インプラントの頭が粘膜から出ている状態のインプラントを「1回法」のインプラントと言います。まずは粘膜下に埋めておいて、インプラントが骨と接合したら「アパットメント」という器具を装着して、粘膜から貫通するシステムを「2回法」といいます。 |
プラットフォームスイッチング | アパットメントインプラントのネック部で、内側に位置づけられる構造をもてば、細菌の進入が骨より遠くにあり、骨吸収が起こりにくいといわれています。 |
ブローネマルクは、インプラントの開発者の名を冠するブランド名です。世界で最も使われているタイプですが、コンセプト自体はインターナルヘックスのほうが進化していると言えます。冠をねじで固定するなら、このブランドの互換性のあるものが良いでしょう。
メーカーの根幹思想に、初期固定ありきの発想があり、スレッドの形状に工夫がなされ、初期固定を得やすくしています。表面性状の骨との結合しやすですが、後述のSLAより劣るように思われます。(個人的意見でありますが、歯科医師の多くが持ってる意見でもあります。)
ITIは、1回法のブランドですが、そもそもこのインプラントが開発された時には、骨移植や前歯の審美エリアのインプラントという概念はなかったため 、もはや粘膜より露出させる形態でオペを終える1回法は、ナンセンスと言えましょう。
それでも時代遅れのシステムデザインのITIが、トップとシェアを争っている現実を見てみると、このブランドのインプラントの表面性状のSLAが優れていることがわかります。とにかく骨にひっつきやすい。つまり「オステオインテグレーションしやすい」ということが、術者に好まれている要因だと言えます。
僕が思うに、SLAはチタン系のインプラントでは現在最強の表面性状だと言えます。
アストラインプラントは、ネジがゆるみにくく、インターナルヘックスの勝ち組メーカーと言えます。しかし、表面性状はSLAより評価が低いというのが。一般的ユーザーの意見です。
インプラントの直径は最大5mmで、もう少し太い径があればと望むユーザーも多いはずです。それに、あえて初期固定を追求することを求めていないメーカーでもあります。骨に圧迫をかけすぎる、高すぎた初期固定に、否定的な立場にあるからです。
当歯科医院で、使用しはじめたインプラントメーカーにオステムというものがあります。節操のないとも言い方もできますが、表面性状はITIと同じSLAで、プラットフォームスイッチングとコニカルシールという、アストラと似た形態を持つインプラントをラインナップに持ちます。
さらに、アストラと類似形態でありながら、直径6mm・7mmというワイドサイズのインプラントもあります。また、スレッドの形状も初期固定がとりやすいものとなっています。後出しじゃんけんで、3大メーカーのいいとこ取りをして、リファインした、インプラントなのです。
果たしてオステムのSLA(オステムはSAとよんでいる)は、オリジナルのITIと同等かどうか…
それは「Yes」だというのが、私の意見です。
このメーカーのSLA処理インプラントならば、光機能化の処理を更に施せば、以前は6ヶ月かかった治癒期間もわずか2ヶ月でオステオインテグレーションを確立し、大幅に治療期間を短縮できることを実際に確認しておりますし、経時的生存率も問題ありません。
上顎においては、以前サイナスリフトなど必要なケースでも、SLAで、ワイドで短いインプラントを使用すれば。リスクのある骨移植を回避できることがあります。
下顎においても、必要以上に長いインプラントを避けることにより、下歯槽神経に近くいれることも避けることができることが、往々にあります。
欧米人に比べて、我々アジア人は骨量が少ないため、このような太くて短くて、優れた表面性状を持つインプラントのラインナップを持つことは、たいへん有功なのです。
オステムインプラントを使用した治療症例の2枚のレントゲン写真、矢印部分の変化をご覧ください。上顎骨が少ないため、ソケットリフト(骨増成手術のひとつ)をして、ワイドのオステムインプラントを埋入しました。わずか2ヶ月後には、移植骨は骨化し、インプラントとの骨結合を獲得しています。
東洋人は顎骨が小さく、インプラント治療が難しい場合があります。たとえば、上のレントゲンですが、顎骨がやせています。通常のインプラント埋入をすれば、下歯槽神経(黄色に印をいれています)に非常に近くなりますので、短く太いインプラントが有効になります(φ6mm 長さ8,5mmを使用:赤矢印)
アストラインプラントでは、インプラントネック部破折が報告されていることがあります。僕もその経験があります。インターナルヘックスは、インプラントの中をくり貫かれた形状のため、小さな直径サイズは破折の可能性があるのです。
>> http://www.geocities.jp/ktjmy987/fracture/fracture.html
変にオリジナル形状を自社開発し、時代に乗り遅れたガラパゴス状態のメーカーより、3大メーカーの模倣といいとこ取りをしたオステムは、現在のところユーザーにとっては、実に優れているインプラントだと言えるのです。
たとえば、国産で最も多くシェアを取っている京セラですが、現実問題、ネジ固定には不向きですし(事実ネジ固定でこのメーカーを使用するユーザーはほとんどいない)、他メーカーとの互換性はない孤立したシステムです。そこらが国際的にみると、存在すらしていないという認識となります。※前述のシェア分布表参考
専門的な知識と経験で最善の選択をするのが、歯科医師の役目です。メーカー間の競争は続き、今後変化はあるかもしれませんが、現在のところ、当医院では回復の厳しい症例には、オステムインプラントを使用しています。
アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、日本の家電の秀作を次々と分解し、分析したらしいです。ジョブズはこう言っています。
「文明のすぐれた部分を分析しそれを恥ずことなく盗む。そして、それを更に進化させるのが僕のやり方だ」
現在もアイフォーンの部品の90%以上がUSA製ではありません。オバマ大統領がジョブズに国内雇用を上げるために、アップル製品は全てアメリカ国内でできないのかと問いかけた時、ジョブズは即座に答えました「未来永劫それは不可能だ!」と。
メーカー名 | 表面性状 | 書記固定 | 1回法/2回法 | プラットフォームスイッチング |
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ブローネマルク | △ | ◎ | 2回法 | × |
ITI | ◎ | △ | 1回法 | ○ |
アストラ | △ | △ | 2回法 | ◎ |
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